エルズベルグロデオ、矢野和都CP14まで走破

日時:6月7日
会場:オーストリア アイゼンナーツ エルズベルグ鉱山
天候:晴れ
コンディション:ドライ
PHOTO&TEXT:稲垣正倫(ANIMALHOUSE)

 6月7日、宇宙一難易度の高いエンデューロとよばれているエルズベルグロデオが開催。昨年まで田中太一が表彰台を目指して4回の完走を達成してきた同レースを、矢野和都が引き継ぐ形で参戦することとなった。3000台とも言われる申込があるなか、1500台が予選に参加でき、500台が決勝へ。そのうち例年では10台にみたない完走者であることから、事実上究極のヘアスクランブルレースと言われている。
 昨年は、ウェットコンディションだったにも関わらず、30台程度の完走者を輩出。この理由としては、ハードエンデューロを競技として取り組む人口が増えてスキルが上がったことと、欧州のタイヤメーカーがハードエンデューロ用のタイヤをこぞって生産しはじめたこと、それにともなってノウハウが蓄積されたことが挙げられる。主催者としては、究極のハードエンデューロとしての面目を保つため、2015年は相当に難しくすることが考えられていた。

 矢野は、このレースに挑むに当たってたくさんのタイヤを事前にテスト。「JNCCの爺ヶ岳には2時間くらいもったことを確認しています。それ以上はブロックが飛んでしまったけど、ブロックが飛んだ後も、驚異的なグリップ力は変わりませんでした。インフィールドの土の部分ではだいぶ性能を落としてしまいますが、岩場では問題がない。
 エルズベルグロデオでは、難しいスローペースなセクションだけでなく高速の区間もあるため、そこでブロックを飛ばしてしまわないかと心配でしたが、これにはプラザ阪下で30分1ヒート全開で走ってみてテストしました。この時は、まったく問題ありませんでした。
 どのタイヤよりも、明らかにグリップで勝っていたので、エルズベルグにはゲコタで挑戦したい、とiRCさんにお願いした次第です」と矢野は言う。
 2日に分け、2回のチャンスがある予選のタイムアタックでは、持ち前のスピードを活かして余裕で26位をゲット。51位以降は2列目スタートで不利になってしまうが、だいぶ好チケットを手に入れた形であった。


 決勝では、いよいよix-09wゲコタの出番。フロントには慣れているB社のタイヤを履き、リアはG社のハードエンデューロ用ムースとix-09wゲコタを組み合わせた。
 スタートは少し出遅れてしまい、その影響もあって序盤のセクションで揉まれてしまう。また、フロントディスクをヒットしてしまい、フロントブレーキに支障を来してしまうなど、苦しいレースの立ち上がりとなった。
 矢野は「とにかく想像を絶する下りの怖さでしたし、何カ所も助けてもらわないと上がれないセクションがあって、未知の世界でした。アイゼンナーツについてから、ほとんどエルズベルグのセクションを歩いてみてまわて、おそらく山歩きで20kmは歩いたんじゃないでしょうか。それでも、コースが正確に発表されるのはレースの前々日で、正しいラインは見れていない状況です。どのライダーもこれは同じですね。
 ゲコタはとにかく素晴らしかったですね。石畳が出ていて斜めに横切るようなところで、どのライダーも苦戦していたのですが、僕だけ何事も無かったかのようにスルーできたことをとてもよく覚えています。ラインが通常一本しかないようなところでも、新たにラインを作れるほど、アドバンテージがあります。何度も、ごぼう抜きできたんです。ゲコタでしか、そんな動きはできないと思いますよ。
 ざくざくでワイドオープンにしなくてはいけないセクション、ウォーターパイプなどでもまったく問題ありませんでしたね。
 今回は、チェックポイント14までいったわけですが、このあとはあまりタイヤを酷使するところがないんです。それで、レースが終わってみたらブロックは完全に残っていた。つまり、このタイヤはエルズベルグでパーフェクトに使えるし、アドバンテージがあるということですよ!」と興奮気味にコメントしている。